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簡単な計算ができないのは病気? 大人に多い原因と向き合い方

更新日:2025年10月29日

大人になっても計算が苦手という人は意外とたくさんいます。しかし、簡単な計算もできない場合には、仕事に支障が出ることがあります。大人になっても簡単な計算ができない人には、限局性学習症(SLD)または学習障害(LD)と呼ばれる発達障害の可能性があります。
 

大人になっても簡単な計算ができない原因

大人になっても簡単な計算ができない方は、次の原因が考えられます。

 

単に計算が苦手

数字や計算に弱い人は、共通して計算に対して苦手意識を持っています。苦手意識を持ってしまった原因としては、次のようなことが考えられます。

 

● 小学生の時に頃に、分数や小数、割合、速度の計算などが理解できずにつまづいた(この頃に、学校を休みがちだった、転校をしたなども含みます)。
● 基礎的な計算で一度つまづいてしまうと、授業についていけず算数が苦手になる。
● 苦手意識を解消する機会を得られないまま大人になってしまった。

 

病気が関連している可能性

計算が苦手という方の中には、限局性学習症(SLD)が原因となっているケースもあります。限局性学習症(SLD)は、読む・書く・計算するといった特定の学習行為において支障が認められる発達障害です。全般的な知能の遅れはないため、知的障害とは異なります。以前は、単に学習障害(LD)と呼ばれていました。

 

限局性学習症(SLD)などの発達障害は、生まれつきみられる脳の発達の違いが原因のため、大人になってから発症することはありません。多くの場合は、子どもの頃に特性が現れますが、本人も周囲も気づかずに大人になることも少なくありません。大人になって仕事や人間関係でつまづいてしまい、その時に初めて発達障害に気づく場合もあります。

大人の限局性学習症(SLD)・学習障害(LD)

発達障害には、特性によって「自閉スペクトラム症(ASD)」「注意欠如多動症(ADHD)」「限局性学習症(SLD)」の3つのタイプがあり、複数の特性が重なって現れることもあります。

 

限局性学習症(SLD)・学習障害(LD)の特徴

「限局性学習症(SLD)」は、読む・書く・計算するといった特定の学習行為において著しい困難を示す状態です。主な特徴は次の通りです。

大人の「限局性学習症(SLD)」の場合には、書類や資料、マニュアルを読むこと、書類やメモを作成すること、統計や分析が難しいなど、日常生活や仕事上でさまざまの困難があります。

 

算数障害(ディスカリキュリア)

「限局性学習症(SLD)」で、計算が難しい場合は「算数障害(ディスカリキュリア)」と呼ばれています。

「算数障害」の方がどのくらいいるのか公的な統計はありませんが、海外の研究や国内の調査では、学齢期の子供の約1%から2.3%、全体では5〜7%程度いると推定されています。これは、日本全体ではおよそ300万人に相当する可能性があります。

大人の限局性学習症(SLD)・学習障害(LD)の診断

「限局性学習症(SLD)」の診断は、アメリカ精神医学会が作成している精神疾患の診断・統計マニュアル「DSM-5」の診断基準や認知能力検査などを問診と併用して行われます。

 

診断は心療内科や精神科、メンタルクリニックなどで受けることができます。しかし、大人の「限局性学習症(SLD)」を専門としている医療機関は少ないため、受診する前に電話などで問い合わせしてみましょう。

大人の限局性学習症(SLD)・学習障害(LD)で仕事で困難になること

大人の「限局性学習症(SLD)」の方は、仕事上で次のような困難を抱えがちです。

 

資料・マニュアルなどの文章を正確に理解するのが難しい

仕事では、資料やマニュアルなどを読む機会が多くあります。読字障害(ディスレクシア)の方は、文章を正確に理解することが難しいため、仕事を覚えることができない、間違って業務を進めてしまうことがあります。

 

書類を作成したりメモを取ることができない

仕事では、報告書や稟議書などの書類を作成する機会が多くあります。また、上司からの指示などをメモしなければならないこともあります。書字表出不全(ディスグラフィア)の方は、文字を書くのが苦手なため、書類を作成したりメモを取ることが上手くできません。

 

統計や分析など数字を使う業務が困難

算数障害(ディスカリキュリア)の方は、数値を使用する統計や分析の業務が困難です。また、時計が読めないことからスケジュール管理が難しいケースもあります。

大人の限局性学習症(SLD)・学習障害(LD)を持つ人が仕事を続けるポイント

「限局性学習症(SLD)」の方が仕事をする際には、読む・書く・計算するといったそれぞれの苦手なことをカバーできるツールを利用したり、周囲の人に理解を求めたりすることで、職場での困難を軽減することができます。

自分が苦手なことを把握する

自分が苦手なことやできないことを正確に把握できていない場合には、対策法を考えられなかったり、周囲の人にサポートを求めようとしても正しく伝えられません。まずは自分の苦手なことを把握して、仕事上ではどんなことが困難なのか理解することが大切です。

 

苦手なことやできないことが明確であれば、読む・書くが苦手なのに頻繁に書類を作成しなければならない職場を選んだり、計算が苦手なのに経理など数字を扱う仕事に就くなどなどのミスマッチを防ぐことができます。

職場の人に理解してもらう

自分はどのような業務が苦手なのかを、上司や同僚などの職場の人に伝えておけば、理解が得られやすくなります。「限局性学習症(SLD)」である事を隠したり、苦手なことをごまかしても、業務をうまく遂行できないことが続けば、仕事を続けるのが難しくなることもあります。

 

職場の人に障害のことを理解してもらい、合理的な配慮を受けることで長く働き続けることが可能になります。

アプリなどのツールを活用する

「限局性学習症(SLD)」の方が苦手なことは、音声ソフト計算アプリなどを使用することでカバーできるケースもあります。

 

スマートフォンの録音機能やボイスレコーダーを使えば、メモを書かなくても後から聞き返すことができます。また、文字を書くのが難しいがパソコンやスマートフォンの入力はできるという場合は、パソコンやスマートフォンのツールも活用しましょう。

 

読むのが苦手な方は文章読み上げのソフトを使用したり、計算が苦手な方は計算ソフトを使用することで、苦手な業務をカバーすることができます。

大人の限局性学習症(SLD)・学習障害(LD)の就職率と支援機関

読む・書く・計算するが苦手な「限局性学習症(SLD)」の方は、職場でさまざまな困難を抱えるケースがありますが、どのくらい就職しているのでしょうか。

 

大人の限局性学習症(SLD)・学習障害(LD)を持つ人の就職状況

厚生労働省が公表している「 令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」によると、「限局性学習症(SLD)」を含む発達障害の方の雇用者数は、令和5年6月時点で回答事業所(6,406 社)において雇用されている発達障害者は1,583人で、推計で9万1千人とされています。

 

障害別の雇用割合で最も多かったのは「自閉症、アスペルガー症候群その他広汎性発達障害」で 69.1%、次いで「注意欠陥多動性障害」が15.2%で、「学習障害」は2.4%でした。

 

参考:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」

 

大人の限局性学習症(SLD)・学習障害(LD)を持つ人の支援機関

大人の「限局性学習症(SLD)」の方を支援する機関には次のようなものがあります。「限局性学習症(SLD)」によって、日常生活や仕事で困ってる場合は相談してみましょう。

 

■障害者就業・生活支援センター

 

「障害者就業・生活支援センター」は、障害者の職業生活の自立を図るため、関連機関と連携して就労支援と生活支援を一体的に行う公的機関です。

 

就労支援では、就労に向けた準備支援・職場実習のあっせん・職場定着支援などを行っています。生活支援では、規則正しい生活を身につけたり、毎日働ける体力をつけるなど、日常生活の自己管理や健康維持に関するアドバイスなどを行います。

 

 

■ハローワーク

 

ハローワークは、国(厚生労働省)が管轄する総合的雇用サービス機関で、正式な名称は公共職業安定所です。ハローワークには、障害について専門的な知識を持つ職員や相談員が配置されていて、求職の申し込みから就職に関する相談、就職後の定着まで一貫した支援を行っています。

 

障害者雇用の求人の他、一般の求人も紹介してくれ、面接に同行したりするなどきめ細かな支援を受けられます。また、求職者には公共職業訓練の斡旋もしています。

 

 

■就労移行支援事業所

 

「就職移行支援」は、障害者総合支援法に定められた障害福祉サービスのひとつです。就労移行支援事業所では、一般企業への就職を目指す障害者に対して、働くために必要な知識やスキルを身につけるトレーニングや就職後も安定して働けるようにサポートを行っています。

 

令和5年4月時点で、就労移行支援事業所は全国で2,934か所あります。事業所によって受け入れる障害の種別や実施されるプログラム、サポートの内容などが異なるため、自分に合った事業所を選ぶことが重要です。

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前の章で大人の限局性学習症(SLD)・学習障害(LD)を持つ人が仕事を続けるポイントを紹介しましたが、障害者雇用制度を利用すれば、就職した企業から合理的配慮を受けやすくなります。

 

例えば、「限局性学習症(SLD)」の特性によって、読む・書く・計算するに関連して業務が困難であれば、業務の担当を変えたり、業務の手順を見直すなどの配慮をしてもらえるかもしれません。

 

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まとめ

「限局性学習症(SLD)」は、読む・書く・計算するといった特定の行為が著しく困難な発達障害です。大人になっても簡単な計算ができないと悩んでいる方は、「限局性学習症(SLD)」の算数障害(ディスカリキュリア)が原因かもしれません。

 

計算ができず日常生活や仕事で困難を抱えている方は、まずは心療内科や精神科、メンタルクリニックなどの専門医に相談してみましょう。

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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