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身体障害者の収入源とは?障害年金や働けない場合のお金について

更新日:2023年03月16日

日本は障害者基本法の改正や障害者差別解消法の制定など2014年に障害者権利条約を批准してからの障害者の権利や社会参加するための法的整備は格段に進んだと言えます。しかし、実際に身体障害者の経済的状況はどうなのでしょうか。働ける場合、その就労や雇用の状況はどうなのか、また働くことに支障があるような障害がある場合、どのような社会保障があるのか気になるところではないでしょうか。ここでは障害年金という日本の社会保障制度上の身体障害者のための年金と労働収入の現状について、そして就労を目指す身体障害者への支援を行なう機関についてご紹介していきます。

身体障害のある人の収入源は?

障害年金

障害年金は障害や傷病が年金受給の条件に当てはまれば支給される日本の社会保障制度です。年金と言えば、多くの方が65歳以上になった際に支給される老齢年金を想像しますが、障害年金は65歳以下でも障害や傷病により働けなくなったり、その他の制度上認められる状態になった場合に支給される年金で、このような年金があることは一般的にはあまり認知されていません。

 

働けない程度の障害や傷病がある場合、企業保険等に加入していなければこの障害年金が唯一の収入になるケースもあります。障害年金だけではなく、こういった社会保障制度や社会福祉制度の給付やサービスは多くが申請により始まるため、知らなければ申請できず、損をする可能性があります。

 

働いて得られる収入

身体障害があっても、その障害に適した仕事があれば就労し、収入を得ることができます。厚生労働省による「平成30年度障害者雇用実態調査」では、従業員規模5名以上の事業所で約82万人、その内訳は以下のとおりです。※同調査の数値の千の位を四捨五入したもの

 

・身体障害者:42万人

・知的障害者:19万人

・精神障害者:20万人

・発達障害者:  4万人

 

このように、障害者の種別で見ても、身体障害者の被雇用者は全体の約半数です。多くの身体障害者が雇用され、就労している実態がわかります。

 

障害者権利条約の批准によって制度が整備されたこともあり、障害者の社会参加が大きく推進され、昨今の労働人口の減少も伴って障害者の雇用が促進されている状況があります。

 

身体障害者のみならず、障害者の就労への門戸は非常に広くなったと言ってよいでしょう。

 

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働けない場合はどうする?

身体障害のある人が働けない場合、障害年金以外にも以下のような社会福祉制度や支援制度があります。

自立支援医療制度(更生医療、育成医療)

自立支援医療とは、心と体の障害を治療する際に必要となる医療費の自己負担の割合を軽減する公的な制度です。

 

自立支援医療には、

・精神疾患の治療に適用される精神通院医療

・身体障害の治療などの適用される更生医療

・身体に障害がある子どもに治療に適用される育成手帳

の3つの種類があります。

詳しくは以下の記事を確認ください。

 

 

生活保護

生活保護は、病気やケガなどといった理由で働くことが出来ない人や、働いていても極端に収入が少ない人を対象にして、現金を支給し最低限の生活が出来るように支援する制度のことです。

生活保護の支給を受けるためには、住んでいる市町村の福祉事務所に申請をおこなう必要があります。一世帯につき一人のケースワーカーが、生活保護に関する相談や訪問調査をおこないます。

 

特別障害者手当

特別障害者手当とは、精神または身体に重度の障害があり、日常生活において常に特別の介護を必要とする人に対して支給される、重度の障害のため必要となる、精神的または物質的な特別な負担の軽減のための制度です。

支給の対象は精神または身体に重度の障害を持ち、日常生活において常に特別な介護を受ける必要がある状態にある在宅の20歳以上の人です。

 

支給額はひと月当たり27,350円となっています(この支給額は、令和2年4月より適用されます)。所得制限があるため、注意が必要です。

 

障害者手帳による税金の控除や公共料金の割引

また、障害者手帳の交付を受けることで、税制上の優遇を受けることができます。

優遇措置の種類は以下の通りです。

 

・障害者控除と特別障害者控除

障害のある本人や配偶者、扶養親族に精神障害を含む障害がある場合には、障害者控除の対象となり所得額から一定の金額が控除されるため、住民税や所得税を低く抑えることができます。この障害者控除は所得課税に関するもの以外に、相続税に関しても設けられています。

もう一つの特別障害者控除とは、障害者控除の一種で納税者本人や配偶者、扶養家族に特に重度の障害を持つ人がいる場合に所得が控除される制度です。

 

自動車税・軽自動車税及び自動車取得税の控除

精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている場合、都道府県により自動車税および軽自動車税、自動車取得税の控除を受けることができます。

この控除を受けるためには、精神障害者保健福祉手帳の等級や、本人が利用する車であるかどうか、本人の移動のために家族等が利用するものであるかどうかなどの条件があります。

この条件は都道府県により異なるため、一度管轄の窓口へ問い合わせてみることをおすすめします。

 

障害年金について

一口に障害年金と言っても、実際は「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類がありますので違いを明確に把握しておきたいところです。

 

障害基礎年金

障害基礎年金は国民年金に加入している人が該当する障害状態になった時に給付される年金です。20歳未満や60歳から65歳の未加入期間に生じた障害も対象になります。

 

給付の対象となる障害には、身体障害はもちろんのこと、精神障害、知的障害、発達障害も含まれ、その障害の状態により、1級か2級の認定を受けます。

 

各級の年金額(年額)は以下のとおりです。

 

1級:780,900円×1.25+子の加算

2級:780,900円+子の加算

 

子の加算における子とは18歳未満か20歳未満で障害等級1,2級を持つ障害者となります。また、第1子、第2子は224,700円、第3子以降74,900円と加算額が変わってきます。

 

障害厚生年金

障害厚生年金は厚生年金に加入している(事業所等で被雇用者として就労している、公務員、私学教員を含む)人が該当する障害状態になった時に給付される年金です。

 

こちらも対象となる障害は障害基礎年金と同じく、身体障害、精神障害、知的障害、発達障害が含まれます。こちら、障害厚生年金の等級は3級あり、認定された場合のそれぞれの年金額は以下のとおりです。

 

1級:報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額(224,700円)

2級:報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額(224,700円)

3級:報酬比例の年金額(最低保証額585,700円)

 

報酬比例の年金額とは被保険者の平均標準報酬月額と、被保険者期間の月数を計算式に当てはめたもので、障害基礎年金のように定額ではありません。

 

また、配偶者の加給年金額とは65歳未満の配偶者がいる場合に加算される額のことです。

 

厚生年金の第1号被保険者は国民年金の第2号被保険者となるため、両方の要件を満たせば障害基礎年金と障害厚生年金を同時に受けることができます。これらの年金の申請は市町村の年金窓口や年金事務所、年金相談センターで年金請求書を記入し、必要書類を添付して提出します。

 

障害年金についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

働いて得られる収入

身体障害のある人の平均収入

 

週所定労働時間別平均賃金

出典:厚生労働省「平成 30 年度障害者雇用実態調査結果」

 

グラフは週の労働時間別に見た身体障害者の賃金(月額)ですが、全平均では21.5万円、30時間以上労働する人では24.8万円、20~30時間未満では8.6万円、20時間未満では6.7万円という結果が出ています。

 

同じく厚生労働省の「令和2年賃金構造基本調査」ではサラリーマンの平均月収は27.8万円となっていますので、週30時間以上働く場合、障害の有無よる収入に大きな差にはなっていないことがわかります。

 

ちなみに他の障害種別の平均収入は以下のとおりです。

・知的障害者:11.7万円

・精神障害者:12.5万円

・発達障害者:12.7万円

 

データを見ると、身体障害者の月収は日本全体での平均月収と大差はなく、かつ、他の障害種別の賃金と比較すると倍近くの差があることがわかります。身体障害者の場合、他の障害種別より安定して長時間(週30時間以上)労働できる人が多く、そのため、一般の給料に近くなり、他の障害種別では短時間労働が多い傾向にあります。

 

また、身体障害者の場合、1,2級の重度等級者が全体の4割を占めており、等級に関係なく、障害部位によってはできる仕事があることがわかります。身体障害者の就労の機会は大きく広がっていると言ってよいでしょう。

 

 

身体障害のある人の働き方

【一般雇用】

一般雇用とはいわゆる障害者雇用ではない通常の雇用形式で、障害の有無は関係なく採用が行われ、当然給与や待遇も同じということになります。つまり、障害がない人と同じ土俵で就職活動をします。障害を理由に応募できない、採用しないことは人権侵害になりますので障害があっても採用試験などに挑戦することはできますが、障害があることを告げて就活(オープン就労)すれば障害からくる特性によりその仕事が向かない、求めている時間数働けない場合など、障害がない人に優先して採用されることは難しいでしょう。かといって、自分の障害を隠して採用された場合(クローズ就労)、それをばれないようにするのに返ってストレスを抱えてしまうケースも少なくありません。

 

障害が仕事に影響するようなことがあれば、隠していたことが問題になる可能性があります。その後も雇用主や同僚に理解を得て仕事を継続することも難しくなるかもしれません。

 

【障害者雇用】

障害者雇用とは、障害者雇用促進法で定められている障害者の雇用を促進するために設けられている障害者専用の雇用枠です。このため、障害がない人と求人枠を競う必要がなく、仕事内容も環境も基本的には障害に配慮されたものとなっているため、一般雇用と比較して働きやすく、継続しやすくなっています。

 

ただし、そもそも障害者雇用枠の求人自体が一般雇用の求人よりも圧倒的に少なく、また仕事内容も単純作業が多いため選択肢の幅が狭く、賃金自体も最低賃金は守られるものの、安い求人が多いのが現状です。

 

労働人口が減少し、人材確保が困難になってきた現状では、障害者の雇用数は年々増加しています。多くの企業は簡単な仕事は障害者雇用枠の人に任せ、仕事の効率化を図る方向にあるようで、この傾向はしばらく継続すると考えられます。

 

身体障害のある人の仕事の探し方

ハローワーク

 ハローワークは別名公共職業安定所と呼ばれる、就労を希望する人に対して求人を紹介し、その他の必要な就労支援サービスを行なう公的機関です。全国に544ヶ所設置されています。

 

障害者の就労に関しては一般の窓口とは別に障害者用の窓口があり、専門の職員がそれぞれの希望や障害特性に適した求人を紹介したり、履歴書など書き方の指導、面接の練習など採用に結び付くさまざまな支援を行ないます。

 

障害者の就活の第一歩はまずハローワークに行くことと言っても過言ではありません。

 

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは障害者雇用促進法により規定されている、障害者の就労と生活に関する様々な相談を受け、支援を行う機関です。

 

実際のセンターの運営は社会福祉法人などに委託されていることが多く、障害者の住んでいる地域において身近な相談機関として、就活に関するアドバイスや職場実習の斡旋、就職後の職場定着支援などを行なうとともに障害者を雇用しようとする企業にアドバイスも行ないます。平成29年時点で 332ヶ所のセンターが設置されています。

 

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは独立行政法人高齢者・障害者雇用支援機構が設置する、障害者の職業リハビリテーションに関する支援を行う機関です。

 

具体的には、専任カウンセラーによる障害者の就労に関する相談、職業適性の評価、円滑な就活に向けてスキルアップを目指す就労準備支援、必要に応じて就労する事業所にジョブコーチを派遣する、休職中の障害者に対して職場復帰の支援を行なう、事業所への障害者雇用についてのアドバイス等を行なうなどのサービスがあります。

 

各都道府県に1ヶ所は設置されていますのでお住まいの地域の近隣にあるか、検索してみましょう。

 

障害者専門の就職・転職エージェント

障害者専門の就職・転職エージェントとは、障害者雇用枠の求人を取り扱い、就職、転職の支援を総合的に行なう民間の事業所です。

 

障害者の就労について特化したスタッフが一人一人の要望や障害特性に合った求人を紹介し、就活や就職後の支援を無料で行ないます。それぞれのエージェントで独自の非公開求人を持っていたり、企業とのつながりがあります。サービスの利用には障害者手帳が必要となります。

 

アットジーピー(atGP)は10年以上に渡って障害者の就職・転職をサポートしている実績のあるエージェントです。

 

障害者の就職・転職に精通したキャリアプランナーが、転職相談を通してあなたと求人とをマッチングします。

atGPエージェント

まとめ

2014年に障害者権利条約を批准したことによって、日本の障害者福祉や社会参加の基本的な考え方は国際基準に沿ったものとなりました。それに伴い、就労を含む障害者の社会参加に関する制度の整備や人権に関する啓蒙活動も進んでいます。

 

現状では障害者の雇用件数は毎年のように増加しており、就労を目指す障害者には追い風が吹いていると言えます。

 

特に身体障害者の就労は数値が示す通り、他の種別の障害者より安定して働ける人が多いため、週30時間以上働く場合、その平均月収は一般と大きな差はありません。

 

障害に不安を抱えながらも働きたいという意欲がある方は、一度今回ご紹介した就労を支援する機関やエージェントに気軽にご相談されてみてはいかがでしょうか。

 

また、どうしても日常生活や就労に大きな影響がある障害をお持ちの方で障害年金を受給しておられない方は是非一度、お近くの年金事務所や市町村役場の年金窓口に相談してみましょう。不十分な労働収入を年金で補えるかもしれません。

 

 

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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