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自閉症の人が一人暮らしする際の注意点と工夫について

更新日:2023年03月10日

ASD(自閉症スペクトラム障害 以下ASD)の方の中には、仕事が順調に続けられているし「そろそろ一人暮らしをしたい」と考えている方もいるのでしょうか。 本記事では、ASDの方が一人暮らしをする際に必要なことと注意点、快適に暮らすための工夫、困ったときの相談先などについて紹介します。
 

ASDの特徴や症状

ASDは、対人関係やコミュニケーションが困難なことに加えて、強いこだわりといった特徴がある発達障害です。スペクトラムとは、症状があいまいな境界を持ちながら連続していることを指します。

 

かつては、「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」などの診断名がつけられていましたが、アメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル「DSM-5」が出版されて以降は、「ASD」が診断名として使われるようになりました。

 

ASDの診断時期

ASDの症状は、生後2年目(12ヵ月〜24ヵ月)に現れることが多く、1歳半の乳幼児健診や3歳児検診でASDの可能性を指摘されることがあります。

しかし、知的障害を伴っていない場合や言葉の発達に問題がない場合には、小学校入学後やなかには成人になってから、初めて診断されることもあります。

 

最近の調査によると、子どもの20〜50人に1人がASDと診断されるとされており、男性の方が多く、女性の約2〜4倍という報告もあります。

 

大人のASDの特徴

ASDという診断名であっても、特性の現れ方は人それぞれです。

 

コミュニケーションの質の違い

大人のASDの特徴として、相手が言っていることや感じていることに気づいたり理解するのが難しいというのがあげられます。また、自分が言いたいことを相手にわかりやすく伝えることも苦手です。

 

さらに、「言葉をそのまま解釈する」「想像力が乏しい」という特徴があるため、表情や言葉のニュアンスから状況を察することができず、冗談や社交辞令が通じないことがあります。また、「適当に」や「もう少し」など、幅のある表現を理解するのも難しい場合があります。

 

強いこだわり

ASDの特徴の一つである「強いこだわり」や「興味の範囲が狭い」が、トラブルを引き起こすこともあります。例えば、強いこだわりから、いつもと違う状況や想定外の状況に対応できなかったり、好きな仕事には没頭するが他の仕事には興味を持てないということも起こることがあるでしょう。

 

二次的な症状

ASDの人は、特性が周囲に理解されず、それが原因で二次的な症状を発症することがあります。発症しやすい症状として、人間関係で孤立する状況などから「引きこもり」や「うつ病」になることがあります。

また、ASDの人は、不安や恐怖に敏感で強いストレスを受けやすく、「パニック障害」や「対人恐怖症」などになってしまうこともあります。

ASDを持つ人は一人暮らしできる?

結論から先に述べると、ASDの方でも、特性に合わせて工夫したり、支援期間のサポートを受けることで一人暮らしは可能です。

 

一人暮らしをするために必要なスキルには、次のようなものがあります。

・金銭管理

・掃除洗濯

・片づけや整理整頓

・時間管理

・料理

・健康管理

 

ASDの特性は人それぞれで異なっていて、得意なことや苦手なことも違います。まずは、自身の特性について理解しましょう。そして、上記で紹介した一人暮らしに必要なスキルを身につけるため、家族など他の人と一緒に暮らしているうちに、練習して慣れておくことが必要です。また、困った時の相談先と連絡方法を決めておきましょう。

一人暮らしをする際に必要なこと

初めて一人暮らしをする際には、次のような流れで準備が必要です。

 

お金を準備しておく

初めて一人暮らしをする際には、けっこうな費用がかかります。一人暮らしをしようと考えたら、早めにお金の準備をしておきましょう。一人暮らしを始める際には、次のような費用が必要となります。

 

賃貸契約に関する費用

アパートやマンションを借りる際には、敷金や礼金、仲介手数料などが初期費用として必要です。

 

生活に必要なものの購入

新しく家電や家具を買いそろえる場合は費用がかかります。また、鍋やフライパン、食器、掃除道具などの生活日用品も揃えなければなりません。

 

物件探し

一人暮らしを始める1〜2か月前には不動産会社に行って、一人暮らしで住む部屋を探します。不動産会社に行く際には、家賃、エリア、間取り、設備など、自分が住みたい部屋の条件を絞っておきましょう。希望の条件に合う物件があったら、実際に部屋を見てから契約します。

 

電気・水道・ガスなどの契約をする

部屋が決まったら、電気や水道、ガスなどの契約について調べておきましょう。不動産会社から契約先を紹介されるケースもありますが、電気とガスは小売り自由化によって選ぶことができます。

 

生活に必要なものを揃える

必要なものを購入する前に、現在使っているものの中で一人暮らしで使えるものをチェックします。初めての一人暮らしは何かとお金がかかるものです。新たに購入するものを減らして節約するのも大切です。

 

ベッドや冷蔵庫など家具や家電を購入したら、一人暮らしですぐに必要となるものは入居当日に届くように手配します。最初からすべてを買い揃えようと思うと、無駄なものまで買ってしまうことがあります。必要最低限で揃えて、生活する中で必要なものを買い足しましょう。

 

各種手続き

入居が完了したら、住所変更など各種手続きを行います。

ASDのある方が一人暮らしで注意すること

ASDのある方が、一人暮らしをする際に注意すべき点についてまとめてみました。

 

金銭管理

ASDの人は、特性である強いこだわりが原因で、お金の使いすぎになることがあります。ASDの人は、特定の分野に強い興味を持つことが多く、そして興味のあることに際限なくお金を使ってしまうケースがあります。

 

家賃や食費、水道光熱費など、一人暮らしをするために必要な出費を計算して、それとは別に自由に使っていいお金の限度額を把握しましょう。

 

生活管理

ASDの人は、一つのことに集中する傾向があるため、他のタスクを忘れたり、先延ばしして生活のリズムが乱れたりすることがあります。家事をする際には、カレンダーアプリのスケジュール機能などを利用して、一つひとつチェックしながら行いましょう。

 

また、一人暮らしでは食事や健康の管理も大切です。たまに頑張って料理をしたとしても、毎日となると大変です。ついついコンビニのお弁当やカップ麺などで済ませがちです。料理が苦手だったり、栄養バランスの偏りが心配な場合には、宅配のお弁当や総菜の利用を検討してみるのも良いでしょう。

 

ゲームに集中して、長時間プレイしすぎないことにも注意が必要です。疲れをためすぎたり、睡眠不足にならないように健康管理にも気をつけましょう。

 

ご近所づきあい

マンションやアパートでは、騒音を出さない、ゴミを出す日や時間を守るなどさまざまルールがあります。こだわりが強いASDの人は、ルールを守っていない人に対して、ハッキリと言い過ぎてトラブルとなる可能性があります。思ったことをすぐに口に出すのではなく、どのような言い方が適切なのか、考えてから話すようにしましょう。

 

コミュニケーションが苦手なのもASDの特性です。ご近所の方との付き合いは、まずは挨拶が基本です。

 

困ったときには家族や友人に相談する

一人暮らしを始めて生活環境が変わると、寂しさやさまざまな心配ごとで精神的に不安定な状態になりがちです。そのような精神的なストレスがたまりすぎると「うつ病」や「適応障害」などの二次的な症状が現れることもあります。不安や寂しさを感じたら、家族や友人に相談するようにしましょう。

 

ASDの一人暮らしを快適にするための工夫

 

ASDは、ADHD(注意欠如・多動症)と合併して現れるケースが多くあります。ここでは、ASDとADHDの人が一人暮らしを快適にするための工夫について紹介します。

 

カレンダーアプリやスケジュール管理アプリを活用する

ASDやADHDの人の中には、スケジュール管理やタスク管理が苦手なケースが少なくありません。スマートフォンで、グーグルカレンダーなどのアプリを使ってスケジュールやタスクを管理すると、うっかり忘れを防止できます。

 

家計簿アプリを活用する

ASDやADHDの人は金銭管理が苦手です。スマートフォンの家計簿アプリなどを活用して、毎月の収入や支出を把握しましょう。金銭管理が苦手な方は、クレジットカードを使用せず、現金やプリペイドカードで支払うようにしましょう。

 

片づけの工夫

ASDやADHDの人は、片づけが苦手なことがあります。まずは物の置き場所を決めて、使ったら元の場所に戻す習慣をつけましょう。

 

また、要る要らないの判断が苦手な人も多くいます。「捨てて良いか分からない」「捨てる優先順位がつけられない」という方は、物を捨てる基準を決めると良いでしょう。

 

自分の体調と上手く付き合うコツ

ASDに限らず障害のある方は、自身の障害や特性から心身ともに疲れやすい傾向にあります。あまり頑張りすぎると、ストレスで「うつ病」を発症するなど、二次障害を引き起こすことになりかねません。意識して休む日を作ることも必要です。

困ったときの相談先・支援機関

ASDの人が一人暮らしで困った時には、専門の支援機関などに相談しましょう。

 

発達障害者支援センター

「発達障害者支援センター」は、ASDなど発達障害がある方への支援を総合的に行う専門的機関で、障害当事者と家族から日常生活のさまざま相談を受け付けています。

 

障害者就業・生活支援センター

「障害者就業・生活支援センター」は、ハローワークや就労移行支援事業所、障害者就労支援センター、障害者職業センターなどの関係機関と連携しながら、障害者の就業面と生活面の一体的な支援を行う機関です。

 

相談支援事業所

「相談支援事業所」は、障害がある人の生活の困りごとに対して幅広く対応する窓口です。長い間、障がい者支援施設などで暮らしていた方が、地域での暮らしを始めるにはさまざまサポートが必要です。「相談支援事業所」では、住居の確保や地域生活に移行するための相談などのサービスが提供されます。

 

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atGPについて

ASDの人が一人暮らしをするには、安定した仕事と収入があることが必要です。

「atGPジョブトレ」は、5つの障害に特化したコース制の就労移行支援サービスです。「発達障害コース」では、発達障害専門のプログラムで、働き続ける力が身につきます。また就職活動のサポートや職場定着の支援も行っています。

まとめ

ASDの人が、初めて一人暮らしをする際には、さまざま困りごとや不安を抱えることでしょう。大切なのは、困ったときには一人で抱え込まずに、家族や友人、専門の支援機関などに相談することです。

 

また一人暮らしには、安定した収入が不可欠です。現在、定職についていない転職活動中という方は、就労移行支援サービスなどを利用してみましょう。

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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