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認知症のある方の買い物でよくあるトラブルは?サポート制度をご紹介

更新日:2024年01月12日

認知症の方は、記憶力や判断力が低下するため日常生活にさまざま支障をきたします。買い物でも、同じものを何度も買ってしまったり、要らないものを購入したり、高額な商品を買ってしまうようなトラブルを起こすケースがあります。本記事では認知症の方が起こしやすい買い物トラブルの事例と、家族や周囲の方ができるサポート、サポートする際の注意点などについて解説します。

認知症とは

「認知症」とは、脳の神経細胞の働きが悪くなって、記憶力や判断力など脳の認知機能が低下して、日常生活に支障をきたす状態のことを状態をいいます。原因はさまざまですが、誰もがなる可能性がある病気です。65歳以上から発症するリスクが上がるといわれていて、2025年には高齢者の約5人に1人が認知症になると予測されています。

 

認知症には、機能が低下した脳の場所によっていろいろな種類があります。代表的なものは以下の通りですが、それぞれの買い物トラブルの起こりやすさや内容が異なります。そのため、認知症の症状に合わせたサポートが必要です。

 

アルツハイマー型認知症 脳にアミロイドβやリン酸化タウというたんぱく質が、長い年月をかけて蓄積することで、脳の機能が全般的に低下していきます。脳全体が萎縮していくため、記憶障害、失語、失認、失行など症状はさまざまです。一番多い認知症です。
血管性認知症 脳梗塞や脳出血、脳動脈硬化など脳血管障害で、神経細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなって、神経細胞が死んだりネットワークが壊れることでなる認知症です。脳血管障害を起こした場所によって症状は異なります。
レビー小体型認知症 脳にレビー小体というたんぱく質が溜まることで神経細胞が障害されることで発症する認知症です。実際にはないものが見える幻視や歩きにくいなどのパーキンソン症状などの症状が現れるのが特徴です。
前頭側頭型認知症 脳の前頭葉や側頭葉が萎縮することから発症する認知症です。行動や言語の障害がゆるやかに進行します。

 

認知症のある方のよくある買い物トラブル

認知症が進行して脳の認知機能が低下すると、日常生活にさまざまな支障をきたすようになります。必要の無いものを買ったり、何度も同じものを買ったりなど、買い物に関するトラブルも少なくありません。認知症の方によくある買い物トラブルを紹介します。

 

同じものを何度も買う

認知症の方は、記憶障害から買ったことを忘れてしまい、同じものを何度も購入してしまうことがあります。それにより家族に叱られたり、自分の行動に疑問を持ったりすることでストレスを感じることがあります。また、家族は無駄な出費や食品の管理に困ったり、認知症の症状の進行に不安を感じたりすることがあります。

 

認知症の症状には計画を立てて行動することが出来なくなる実行機能障害もあります。そのため、認知症の方は買い物の際に「何を料理するのか」「どう料理するのか」などを考えずに買い物をしてしまいます。

 

同じ食品を何度も購入してしまうと、賞味期限や消費期限内に食べきれずに腐ってしまうこともあるでしょう。判断力が低下していれば、腐った食品を食べてしまう危険性もあります。

 

必要の無いものを買ってしまう

認知症の症状により判断能力が低下すると、「必要なものか、必要ないものか」の判断ができなくなります。そのためテレビショッピングやカタログ販売などの通信販売で、必要のないものを大量に購入してしまうこともあります。正常な判断ができないため、値段や支払いの事まで考えられず支払えない事態になることもあるので、家族は注意が必要です。

 

また、悪質な業者の訪問販売に騙されて、高額な商品の購入や必要のないリフォーム工事の契約をしてしまった事例もあります。訪問販売や電話勧誘は「クーリングオフ制度」で返品できる可能性がありますが、自ら店舗に出向いて買い物したり通信販売で購入したりする場合ではクーリングオフは適用されないので、家族は注意が必要です。

買い物トラブルが起きる原因

認知症の方が、前章で紹介したような買い物トラブルを起こしてしまうのは、以下の原因によると考えられます。

 

認知機能の低下

認知症が進行すると記憶力や判断力など脳の認知機能が低下します。記憶力が低下すると、買い物に行っても何を買うのか忘れてしまいます。忘れないようにとメモを書いてもメモ自体を忘れることもあります。また、会計したかどうかを忘れてしまい、未会計のままお店を出てしまいトラブルになることもあります。

 

必要の無いものを大量に購入したり、高額な商品を購入したり契約を結んでしまうのは判断力が低下して、正常な判断ができないことが原因です。

 

これまでの習慣

これまで解説してきた通り、認知症の方は認知機能が低下しているため、買い物でさまざまなトラブルが発生する可能性があります。トラブルを避けるためには買い物を控えればよいのですが、これまで自分で買い物に出かけていた方は買い物する行為が習慣になっているため、認知症になっても同じように買い物をしてしまいます。

 

特に、テレビショッピングやカタログショッピングなどの通信販売を利用する習慣があった方は注意が必要です。

認知症のある方の買い物サポート

本当に必要なものは買わなければなりませんし、買い物することを無理に止めさせれば本人にとって大きなストレスになることもあります。買い物トラブルが心配でも、家族や周囲の方のサポートがあれば認知症の方でも買い物はできます。

 

できるだけ一緒に買い物をする

認知症の方と同居している場合には、できるだけ家族が付き添って買い物に行ってサポートしましょう。家にあるものと同じものを買おうとしている時には、違う売り場の商品に目を向けさせるのも有効です。買い物に行く前に、一緒に買うもののメモを作ると、不要なものを買おうとした時に対応しやすくなります。

 

また認知症の方は、時間や場所がわからなくなる見当識障害という症状がでることがあります。普段からよく利用しているお店でも、突然道がわからなくなったり、自宅までの道がわからなくなり迷子になってしまうケースもあります。事故や行方不明などのトラブルを防ぐためにも、家族が付き添うようにしましょう。

 

付き添いサービスを利用する

遠方に住んでいる、同居していても仕事や育児、家事などが忙しいなどの理由で、家族が買い物に付き添うのが難しい場合もあることでしょう。そのような場合には、付き添いサービスや買い物代行サービスを利用する方法もあります。

 

サービスを提供している会社によって料金やサービスの内容は異なりますが、料理や掃除などの家事も組み合わせて利用できるものもあります。

 

お店の人に協力してもらう

よく利用しているお店があれば、お店の方に協力してもらう方法もあります。事前に認知症で支払いを忘れてしまうことがあることを伝えておけば、未会計でお店を出てしまうトラブルを防ぐことができます。

 

成年後見制度を活用する

成年後見制度は、認知症をはじめ精神障害や知的障害などさまざまな理由で判断能力が低下した人に代わって、家庭裁判所から選任された後見人が契約や財産管理などを行う制度です。

 

成年後見制度を利用することで、認知症の本人に代わって契約などの法律行為を後見人が行うため、悪質な業者の訪問販売で高額な商品を購入したり、必要のないリフォーム工事の契約をしてしまうようなトラブルを避けることができます。もし、本人が契約してしまっても取り消すことができます。

買い物をサポートするときの注意点

最後に、認知症の方の買い物をサポートする時の注意点について紹介します。

 

何度も同じものを買ってきたとしても、一方的に𠮟ってはいけません。頭ごなしに叱ると本人の自信を喪失させ、認知症の症状を進行させてしまう可能性があります。叱られて苦しんだり嫌な感情などの心理状態が続くと、認知症の周辺症状(BPSD)を引き起こして、怒りっぽくなったり、暴力行為などが現れることがあります。叱るよりはトラブルを起こさないような環境を作ることが大切です。

 

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まとめ

認知症の方が起こしやすい買い物トラブルについて紹介しました。認知症の方は記憶力や判断力が低下してしまうため、同じものを何度も買ったり不要なものを大量に購入するなどの買い物トラブルを起こすことがあります。

しかし、家族や周囲の方がサポートすることで、認知症の方でも買い物はできます。買い物するために外出すると、認知機能や運動機能のリハビリになるので、本人が買い物に行きたいのであれば、無理に止めさせないことが大切です。そのために必要なのは、トラブルが起こらないような環境を整備することです。
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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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