きょうだい児とは?きょうだい児が抱えがちな不安やストレス、問題など
更新日:2024年10月22日
「きょうだい児」という言葉を、知ってる人は少ないかもしれません。「きょうだい児」は、障害や難病がある兄弟や姉妹を持つ子どものことで、近年になってようやく社会問題として知られるようになってきました。「きょうだい児」は、ケアや介護が必要な兄弟や姉妹がいる家庭で育つことで、さまざまな不安やストレス、問題を抱えるケースがあります。
目次
きょうだい児 とは
「きょうだい児」とは、障害や難病を持つ兄弟・姉妹がいる子どものことを言います。きょうだい児は、親の関心がきょうだいに偏るのを我慢したり、兄弟・姉妹の世話をしたりと、幼少の頃から悩みや問題を抱えるケースがあります。
きょうだい児がひらがなの理由
「きょうだい」といえば「兄弟」という漢字を当てるのが一般的です。しかし、きょうだいの間柄には兄妹、姉弟、姉妹もあります。全ての組合せを表すため「きょうだい」とひらがなで書きます。成人した「きょうだい児」については、「きょうだい者」と呼ぶこともあります。
きょうだい児の人数
日本でのきょうだい児の人数は、正確に把握されていません。しかし、「令和4年生活のしづらさなどに関する調査」によると、日本の障害者の数はおおよそ1,164.6万人とされています。
また、厚生労働省が公表した「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によると、児童のいる世帯の平均児童数は1.66人という統計があるため、日本には約814万人のきょうだい児がいると推測できます。
きょうだい児とヤングケアラーの違い
近年、ヤングケアラーが大きな社会問題となっています。ヤングケアラーとは、ケアが必要な家族がいる場合に、本来は大人が担う家族の世話や介護、家事などを日常的に行っている若者や子どものことです。
きょうだい児が、必ずしも障害や難病がある兄弟・姉妹の世話やサポートをするわけではありませんが、世話や家事を手伝っている場合には、きょうだい児でもありヤングケアラーでもあります。
きょうだい児の悩み
先述の通り、きょうだい児はさまざまな悩みや問題を抱えるケースがあります。代表的な悩みには、次のようなものがあります。
幼少期の悩み
幼い頃には、きょうだい児であることを当たり前だと思って、他の子どもより困難を抱えていることに気づいていないケースもあります。しかし、成長するにつれ、周囲との違いや家族の雰囲気などを感じて、次のように振る舞うようになります。
・親にかまってもらえず寂しい思いをするが、それを親に言えずに我慢する
・難病や障害があるきょうだいを優先しがち、親に対して聞き分けの良い子を演じる
学齢期の悩み
小学生になると、障害のある兄弟・姉妹がいることを、恥ずかしいと思う感情や隠したいという気持ちが芽生えてきます。そう思うことに罪悪感を感じることもあります。
中学生になると、きょうだい児であることに自分なりの考えを持つようになります。障害や難病のある兄弟・姉妹のケアしている親の大変さを知ることで「自分がしっかりしなければ」と責任感を持つようになる一方で、将来への不安を抱くようになります。また、誰に相談したら良いのか分からないといった孤独感を感じるケースもあります。
青年期や成人期の悩み
青年期になると、「自分が独立しても、きょうだいや親は大丈夫だろうか」と悩むようになり、就職や結婚で自分の気持ちや希望を優先できずに、自分らしい人生を送るのが難しくなります。
きょうだい児が抱えがちな問題
きょうだい児童が抱える問題は、状況や家庭環境によって異なりますが、次のような問題を抱えるケースが多いようです。
世間からの偏見
障害者への理解が少しずつ進んでいるとはいえ、まだまだ偏見を持っている人も少なくありません。家族で出かけるだけで、好奇の目で見られたり、心無い言葉を投げかけられたりして傷つくことがあります。
精神的に不安定になりがち
障害のある兄弟・姉妹が優先されることが多いため、常に親に甘えることを我慢して育つため、孤独感を持っているきょうだい児は少なくありません。また、親が亡くなったあときょうだいのケアをしなければならないのは自分だと悩むケースもあります。そのような見通しが立たない将来に不安を感じて、精神的に不安定になりがちです。
人間関係に影響が出る
兄弟・姉妹の病気や障害について理解してもらえず、周囲との人間関係に影響が出るケースもあります。理解のある相手との付き合いを求めると、人間関係が狭まります。狭い人間関係は、学生生活や友人関係だけでなく、就職や結婚などさまざまな面で影響を及ぼします。
将来の選択肢が狭まる
「兄弟・姉妹の世話や親の手助けをするため実家から出られない」「経済的な負担をかけないように進学を諦めた」「安定している仕事を選んだ」など、障害や難病のある兄弟・姉妹の事や家族の負担を考えて、本来希望していた進学や就職を諦めてしまう人もいます。
さまざまな経験をする機会が少ない
兄弟・姉妹に難病や障害があると、旅行や遠出ができなかったりと、他の家庭と比べると行動が制限されます。そのため、さまざまな経験をする機会が少なくなってしまいます。
きょうだい児が利用できる支援機関
これまで紹介してきた通り、きょうだい児はさまざまな不安や問題を抱えがちです。そんなきょうだい児を支援する機関やサービスには次のようなものがあります。
きょうだい支援を広める会
「きょうだい支援を広める会」は、慢性疾患や障害のある子どものきょうだい(児)の支援を広めることを目的とした団体で、2004年から活動をしています。親や大人のきょうだい、福祉や医療関係の専門家など、当事者だけでなくさまざまな立場の人が、きょうだい児の支援について情報交換ができる場です。
ホームページ:https://www.siblingjp.org/
Sibkoto(シブコト)
「Sibkoto(シブコト)」は、きょうだいがひとりではないことを知るために立ち上げられたきょうだいのためのサイトです。サイトは、きょうだい(児)のリアルな体験や声を集めて、きょうだい(児)同士がつながって、自分らしく生きていくためのヒントになることをめざしています。
ホームページ:https://sibkoto.org/
日本きょうだい福祉協会
「一般社団法人日本きょうだい福祉協会」は、すべてのきょうだいが安心して暮らせる社会の実現にむけて、2023年に設立されました。以下の6つの活動に取り組むことを目標としています。
・「きょうだい」や「きょうだいの周りの人」が、同じ悩みを持つ仲間がいることや相談できる場があることに気づいてもらえるようにする活動
・多くの方に「きょうだい」や「きょうだいの保護者」にとっての悩みを知ってもらい、みんなで支え助け合える雰囲気を醸成していく活動 ・みんなで「きょうだい」に関することについて話し合う場を運営する活動 ・きょうだい支援を充実させる活動 ・きょうだいに関する研究や調査を充実させる活動 ・「きょうだい」や「きょうだいの保護者」、「きょうだいの関係者」にとって「安心して暮らすことのできる社会」の実現を目指した活動 |
ホームページ:https://siblingjapan.com/
atGPについて
ここまで、障害や難病を持つ兄弟・姉妹がいるきょうだい児が抱える不安や問題について述べてきました。中には、親が亡くなったあとの兄弟・姉妹のケアに対して不安を抱くケースもあります。しかし、種類や程度によっては障害や難病があっても、就労して自立を目指せる場合もあります。
就労移行支援事業所は、障害や難病がある方の就職を支援するサービスです。障害者の求人転職情報・雇用支援サービス「atGP(アットジーピー)」が運営する、「atGPジョブトレ」は、うつ病・発達障害・統合失調症・聴覚障害・難病の5つに特化したコース制の就労移行支援サービスです。障害や難病を持つ兄弟・姉妹が就職で悩んでいる場合には、気軽に相談してみてください。
まとめ
近年、子どもが家族の介護を担うヤングケアラーが注目されるなど、障害者や難病患者がいる家族への支援への認知度が高まっています。障害や難病を持つ兄弟・姉妹がいる「きょうだい児」も、さまざまな不安やストレス、問題を抱えています。こうした状況を受けて、ようやく政府もきょうだい児の支援を進め始めています。