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発達障害がある方の自己理解の意義と方法についてご紹介します

更新日:2023年03月10日

自己理解、自己覚知といわれる行為は自分を知るための方法です。なぜ、なんのために自己理解が必要なのでしょうか。それは自分をよく知ることで、自分がどんな仕事に向いているのかを知り、他者と関わるときに自分の特性を先に話し、理解を求めたり、自分で苦手や困りごとをある程度軽減し、逆に良いところをうまく活かすなど様々なメリットが考えられます。今回は、発達障害がある人の障害特性を含めた自己理解の意味や方法についてご紹介していきます。
 

障害の自己理解とは

自己理解とは、これまでの経験を振り返り、客観的に自分自身を知る・理解することです。発達障害がある場合、その障害特性までも含めて自己理解する必要があります。なぜなら障害があることで、障害がない人とは違う特性を持ってしまい、その違いが社会での生きづらさに繋がっていくからです。

だからと言って、自分自身を理解するには、それなりの時間や方法が必要となってきます。無関心だったり、目を背けてきた人もいるかもしれませんが、自己理解は自分自身の社会生活の質を豊かにする可能性を秘めています。
働く際に障害をオープンにするしないに関わらず、働くことが難しい、生きづらさを感じているのであれば、自身の障害の自己理解を深めていくことは大切です。

なぜ自己理解が大切なの

では、具体的に自己理解がどのような点で有用なのでしょうか

自分に合う仕事や働き方がわかる

まず、自己理解を深めることで、自身の弱みや強みを把握することができ、自分に合った仕事や働き方が実現しやすくなります。やりたい仕事とできる仕事は違います。好きな仕事に就くことは自己実現という意味では重要ですが、自分自身の特性がその仕事をするのに、またはフルタイムで働くことに無理がないかはよく考えるべきです。無理して働いてもかえってストレスが多くなり長続きしないのでは意味がありません。

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周囲にも理解してもらえる

また、自己理解をすることで、周囲に自分自身のことを詳しく伝えることができ、どんな配慮が必要なのかなどをより細かく伝えられます。これは障害とうまく付き合うための一つの方法と言ってよいでしょう。自分だけが努力しても限界があります。社会参加というのは個人と社会が相互に歩み寄る努力が必要です。相手に自分をよく知ってもらうことで初めて相手側も必要な配慮がわかり、無用なトラブルを防ぐことができます。

自己理解を深めていくための3ステップ

1.自分の強みと弱みを知る

自己理解をとおして強みと弱みを知ることで、自分の特性が活かせる職場や環境を見つけやすくなります。

・強みは企業に提供できる資質 

これまでの仕事・生活で何が得意だったか、周りよりも少しうまくできたもの、今までで夢中になれたものなど、強みを言葉にできれば、企業側にどんなメリットがあるかを想像してもらいやすくなります。

 

・弱みを知って配慮につなげる

弱みに関しても、自分で理解し言葉にできることで企業側がどんな配慮が必要なのかを想像してもらいやすくなります。

 

・特性は強みにも弱みにもなる

特性は職務内容や環境によって弱みにも、強みになります

たとえば、こだわりがある場合は、状況に合わせて行動するような仕事では弱みと言えますが、集中力の持続が必要な仕事では強みと言えます。どんな環境であれば自分の強みが活かせるのかも一緒に考えてみることがおすすめです。

 

2.障害や病気のどのような理由により、どのような困りごとがあるのか

自分自身の障害や病気からどのような症状が起きて、どのような困りごとがあるのかを知ることも重要です。これまでの仕事での経験や普段の生活での困りごとを書き出してみるのがよいでしょう。以下のように体調に関わること、環境に関すること、コミュニケーションに関わることなどに分類してみると整理しやすくなるでしょう。

 

体調に関して
障害が原因で体調が悪くなる場合、悪くなる際の予兆、どんな症状が出るのか、対処法などをまとめておきます

例:頭痛:天気や気圧の変化によって頭痛がする。予兆として耳鳴りがすることが多く、この時点で頓服を服用する。

 

環境に関して
環境の変化によって体調が悪くなったり、集中できなかったりすることもあります。どのような環境が落ち着いて仕事ができるのか、振り返ってみましょう

例:大きな音、急な雑音がするところ、部屋の中心部、人の密度が高いところは落ち着かない。普通の人の会話やBGMは問題ない。部屋の出入り口近くが落ち着く、エアコンの空調は冬は暑く、夏は寒く感じるのでなるべく自然に近い温度がよい。

コミュニケーションに関して
口頭だと理解スピードが遅いためマニュアルやチャットの方が良いなど。

 

3.1と2を基に必要な「合理的配慮」をまとめていく

・自分の弱みや困りごとに対して、自分で対処できることと対処できないことの振り分けをする
・自分では対処できないことに関して、周りの人にどのように対処してもらうとよいかを書き出していく
→ 企業にとってもどのような配慮が必要なのかが分かりやすくなります

自己理解が難しいと感じる場合は

自己理解や自己分析という言葉はあたかも自分自身の視点から理解したり、分析したものと捉えられがちですが、それではなんのために自己理解をするのかわかりません。自己理解は他者に自分のことを理解してもらうための方法でもあるのです。そのため、自己理解は十分な客観性が伴っていなければ勝手な思い込みになってしまいます。

自分のことは自分では見えにくい、だから鏡を見るのと一緒で、正しい自己理解をするためには、家族や友人、主治医、専門家(ハローワークや就労移行支援の相談員、キャリアアドバイザーなど)に相談してみるとより客観的な分析ができるので、相談しやすい人に協力してもらうのがよいでしょう。

 

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まとめ 

自己理解は他者とふれあう社会参加をおこなう上では非常に重要です。一般的にも高校生や大学生が就職活動をするときにも、自分がどの分野に適性があるのかや、自分の長所や短所を知ることは就活の第一歩といえます。

そんな自己理解は発達障害がある人が就職活動する場合にも、非常に有効な方法です。特に発達障害などの障害がある場合、その障害について知ることも自己理解に含まれます。同じ障害でも人によってその表出の仕方は個人差があるためです。

自己理解を深め、就労する際に相手に事前に自身の障害特性や必要な配慮について知らせることができることは、障害がある本人、そして雇用する側相互にとっても非常に意味があります。自己理解を進めて、よりやりたい仕事、そして自己実現につなげていただきたいと思います。

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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