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精神障害のある方の一人暮らしで、相談できる窓口や受けられる支援は?

更新日:2024年05月28日

精神障害のある方で、一人暮らしで自立した生活を送っている人は2割に満たないというデータがあります。しかし、現在は家族と同居している、施設に居住しているという方の中には、一人暮らしをしたいと思っている人もいるのではないでしょうか。また、親が高齢になり一人暮らしをしなければならない状況にある人もいます。今回は、精神障害のある方が一人暮らしを始める際に相談できる窓口や受けられる支援について解説します。
 

一人暮らしをしている障害者の割合

内閣府が発表している「平成25年度版 障害者白書(概要)」によると、一人暮らしをしている障害者の割合は、身体障害者は10.9%、知的障害者は4.3%、精神障害者は17.9%となっていました。

 

また、きょうされん(旧称:共同作業所全国連絡会)がきょうされん加盟の事業所を中心に調査した「障害のある人の地域生活実態調査の結果報告」によると、「誰と暮らしているか」の質問に、「一人」と回答したのは9.4%、「親」が54.5%、「きょうだい」が22.7%、「祖父母」が5.9%と、多くの方が家族と暮らしています。

障害者の一人暮らしへの不安や心配

障害のある方は一人暮らしする際には、さまざまな不安や心配ごとが予想されます。

 

経済面

障害の有無に関係なく、一人暮らしをする際に一番問題となるのは経済的な面です。厚生労働省の「平成30年度障害者雇用実態調査結果」によると、身体障害者の1ヶ月の平均賃金は21万5千円、知的障害者は11万7千円、精神障害者は12万5千円となっています。

 

これらの結果から見ると、精神障害者の方は賃金だけの収入では、経済的に一人暮らしはかなり厳しいと言えます。

 

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参考:厚生労働省「平成30年度障害者雇用実態調査結果」

https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000521376.pdf

 

体力・生活面

これまで家族と同居していた障害者の方が、一人暮らしをすると食事の支度や掃除、洗濯、買い物などの家事を自分でしなければなりません。収入を得るために仕事もしなければならないので、仕事と家事で時間的にも体力的にも大きな負担となります。

 

精神面

自分一人の時間が増えるため、なかには孤独を感じる方もいます。悩みごとがあっても相談できる相手がいませんし、病気になったときに、看病してくれる人もいません。

 

また、経済面や生活面も全て自分で管理しなければならないため、精神的な負担が大きくなります。

一人暮らしをする前にやっておくこと

障害者の方が一人暮らしをする前に、次の項目について準備しておきましょう。

 

必要な生活費の把握・貯金

前章で一人暮らしの世帯で一か月にかかる主な生活費の目安を紹介しました。これを参考に、最低限必要な生活費を計算して、自分の収入で間に合うのか計算してみましょう。

 

また、症状が悪化して長期間の休業しなければならない時や、予定していない出費が発生した時に備えてある程度の貯金も必要です。

 

生活リズムを整え、体調の安定を目指す

一人暮らしをすることで、生活が不規則になる方もいます。生活が不規則になると睡眠時間が足りなくなるなど、体調面に影響があります。一人暮らしを始める前に生活のリズムを整えて、体調を安定させることが必要です。

 

また、医師の指示で薬を飲んでいる人は、飲み忘れないように服薬管理も自分自身でできるようにしなければなりません。

 

家事に慣れておく

家族と同居しているうちに、料理や掃除、洗濯などをやって家事に慣れておきましょう。家事を経験しておくことで、どのくらいの時間がかかって、どのくらいの体力が必要なのかがわかります。また、慣れることで効率よく家事ができるようになります。

 

発作や症状の悪化が起きたときの対処を決めておく

病気などで体調不良となった時や精神障害の発作が起きたり症状が悪化した時に、どのように対処するのか決めて起きましょう。万が一の事態が発生した時のことを、家族とよく相談しておくことが必要です。

一人暮らしをする際に必要なこと

一人暮らしを始める際に必要なことは次の通りです。

 

物件探し

一人暮らしをすることが決まったら、まずは住む場所を探しましょう。不動産会社や賃貸物件の情報サイトなどで部屋を探します。部屋が決まったら、入居の申し込み、入居日の決定、敷金・礼金や仲介手数料などの初期費用の支払い、水道や電気、ガスなどの利用申し込みなどを行います。

 

家具や家電など生活に必要なものを準備する

一人暮らしで必要となる家具や家電などを揃えましょう。主なものをリストにしました。参考にしてください。

・ベッド、布団

・カーテン

・テーブル

・冷蔵庫

・洗濯機

・電子レンジ

・炊飯器

・照明

・洗面道具

・ドライヤー

 

新たに購入しなくても、現在使用しているものを運んでもよいですが、荷物を運ぶ方法も決めておきましょう。購入する場合、家族にお願いすることもできますが、これから一人暮らしをすることを考えると、できるだけ自分でやってみることが大切です。

 

住所の変更など必要書類を役所に提出

これまで住んでいた都道府県や市町村と異なる地域で一人暮らしをする場合には、「転出届」、同じ地域の場合には「転居届」を役所に提出して住民票を移動します。
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一人暮らしにかかる費用

総務省が公表している「家計調査 家計収支編・単身世帯(2021年度)」によると、一人暮らしの世帯で一か月にかかる主な生活費(円)は以下のようになっています。

 

 

自分の収入と障害基礎年金の受給で生活できるかどうか、収入と支出を把握することが大切です。なお、都心に住む場合には部屋の賃貸料が高くなるため、さらに支出が増えることがあります。

一人暮らしについての相談先

障害のある方が、一人暮らしについて相談できる窓口や支援団体を紹介します。

 

自治体の福祉担当窓口

各自治体の福祉担当窓口では、障害のある方の日常生活や社会生活に関する相談を受けつけています。 まずは、居住している市町村の福祉窓口に相談してみましょう。

 

基幹相談支援センター

「基幹相談支援センター」は、障害者の相談支援を行う施設で、778市町村に946か所が設置されています。地域における相談支援の中核的な役割として、次のような業務を行っています。

 

・総合的、専門的な相談支援

・地域の相談支援体制の強化

・地域移行・地域定着の促進

・権利擁護、虐待の防止

 

このうち、「総合的、専門的な相談支援」では、障害のある方の生活全般における相談支援と、さまざまなニーズに応じた専門的な相談支援を実施しています。

 

特定相談支援事業所

地域生活を送るために支援が必要な場合でも、障害者福祉サービスにはたくさんの種類があるため、どこに相談してサービスを受けたらよいのか悩んでしまうケースがあります。

 

「特定相談支援事業者」は、市が指定する相談支援事業所で、障害者の希望する生活や支援の内容を話し合いながら一緒になって考えて、障害福祉サービスなどの利用計画を作成します。

 

一般相談支援事業所

「一般相談支援事業所」は、都道府県が指定する相談支援の事業所で、さまざまな情報提供や相談に応じる「基本相談支援」に加えて、「地域移行支援」や「地域定着支援」をおこないます。

 

地域移行支援では、障害者支援施設などに入所している方や精神科病院に入院している方の、住居の確保や地域生活を送るための支援などを行っています。また、地域定着支援は、単身で生活する障害者が地域生活を続けていくための各種支援です。

 

障害者一人暮らし支援会

「障害者一人暮らし支援会」は、障害者の一人暮らしのサポートをする支援団体です。支援の対象は、主に重度の身体障害者です。身体に障害があっても、施設や病院ではなく、地域で一人暮らしがしたいという人の自立生活のサポートをしています。
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一人暮らしの際に受けられる支援制度

「一人暮らしをするのに不安がある」「一人暮らしをしなければならない状況になった」「一人暮らしに慣れるまで支援を受けたい」という方には、次のような支援制度があります。

 

日常生活自立支援事業

「日常生活自立支援事業」は、障害によって一人で日常生活を送ることに不安のある人が、地域で安心して生活ができるように支援を行うものです。日常生活自立支援事業の支援は主に次の4つです。

 

①福祉サービス利用のサポート

障害者が「障害者自立支援法」に基づく福祉サービスを利用する際の情報提供や手続きを支援

②金銭管理

家賃や公共料金、医療費などの支払い、預金の引き出しなど日常的な金銭管理

③重要書類の管理

年金証書や預金通帳など重要書類の管理を支援

④見守り

生活の変化を見守る

 

自立生活援助

「自立生活援助」は、一人暮らしなどで自立生活を始めた障害のある方に対して、生活上の困りごとや相談を聞いて、自分で解決できるように援助するサービスです。相談できる内容は、食事や洗濯、掃除など日常生活のことの他、体調や金銭の管理なども含みます。

 

地域生活支援事業

「地域生活支援事業」は、障害のある方が自立した日常生活や社会生活が送れるように、市町村や都道府県が独自に行うサービスです。事業の種類には、相談支援事業、意思疎通支援事業、日常生活用具給付等事業、移動支援事業などがあります。詳しい内容については、居住する地域の役所に確認してください。

atGPについて

障害のある方が一人暮らしを続けるには、自身の障害とうまく付き合いながら働き続け経済的に安定することが不可欠です。障害のある方の就労移行支援サービスの「atGP(アットジーピー)ショブトレ」は、「うつ病」「発達障害」「統合失調症」「聴覚障害」「難病」の5つの障害別コースがあり、それぞれの特性に合わせて「就職に必要なスキルの習得」や「就職活動サポート」「職場定着サポート」が受けられます。

まとめ

精神障害のある方で、一人暮らしをしている人は2割以下と多くはありません。しかし、症状が安定していれば生活を工夫することで一人暮らしは可能です。今回の記事では、障害のある方が一人暮らしを始める際の相談窓口や受けられる支援について紹介しました。さまざまな支援制度やサービスがあるので、まずは相談してみましょう。
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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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