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発達障害の人の自立とは? 自立のために知っておきたいこと

更新日:2023年03月10日

「自立」は人が人らしく生きるための重要な要素です。自立して生活できることは自己実現でもあり、生活の質を豊かにするものでもあります。しかしながら、障害者の自立は障害のない人とは異なり、社会的支援が必要であることが前提になります。障害者に限らず、社会福祉の制度やサービスは対象者の自立支援を目的に行われています。一方で、障害者が自立を実現するには、自分自身ができる最善の努力や工夫も必要です。今回は、特に発達障害を持つ方が「自立」するためのポイントや「自立」をサポートする機関などについてご紹介させていただきます。是非ご参考にしてください。
 

障害者にとっての「自立」とは

まずは、「自立」という言葉について考えてみましょう。一般的に「自立」とは、「他者の支援を受けずに自分の力で身を立てること」と理解されています。そう考えると、他者の助けを必要とする人として思い浮かべるのは、子どもや高齢者、障害者などが挙げられるでしょう。

しかし、民主主義社会では、「すべての人の人権は平等である」という考えが醸成されていき、こうした子どもや高齢者、障害者も保護の対象ではなく自立した一人の人間として生活できる社会を目指しています。

福祉分野においては、人権意識の高まりやノーマライゼーションの思想の普及を背景として、「自己決定に基づいて主体的な生活を営むこと」や「障害を持っていてもその能力を活用して社会活動に参加すること」などの意味としても用いられています。

 

 参考:厚労省「自立の概念等について」

 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/04/dl/s0420-6b2.pdf

 

人によっては「障害を持っていたら他者の助けが必要だから、自立はできない」と考えることができますが、障害者にとっての「自立」とは、何でも自分でできるようになることではなく、基本的な生活習慣を身につけることや、継続的な収入を確保できるようになることが重要なのです。そのための社会的な支援を自ら選択し、自分の意思で利用することも、「自立」の範囲と考えられています。

「自立」の4つの要素

身体的自立(生活の自立)

食事や入浴、着脱、整容、洗濯、掃除など、生活を維持・継続するために必要な身体的動作を自分で行うことができる状態のことです。これは、日常生活動作(ADL)とも呼ばれ、障害福祉サービスを利用する場合には、どれくらいのスキルで日常生活動作ができるかで支援区分を判定しています。

 

経済的自立

生活を維持・継続していくための収入が得られている状態です。日常生活に支障があるレベルの障害の人であれば、就労は難しくなりますが、日本には障害者の就労を支援する制度や、障害状態になった時のための経済的支援制度があります。しかし、普通にフルタイムで就労していた時と同様の生活水準を維持することはできません。

また、金銭管理ができる状態でもありますが、知的などの障害があると、金銭の価値がわかりにくくなり、自分で管理することが難しくなります。そのような場合は、家族を頼ることが多くなりますが、事情がある場合は、成年後見制度を利用することができます。

 

精神的自立

精神的自立とは、自らが主体となってどのように行動するか、あるいは行動しないかを選択できる状態を指します。自分の考えで判断し、行動できることと言い換えることもできます。精神的に自立できるということは、様々な出来事に対応しながら物事を進めていくことが可能な状態ということでもあります。

 

社会的自立

周りの人と関わりあいながら、経済活動や社会活動に参加できる状態を指します。自らが様々な集団に所属したり、文化的活動に参加したりすることを意味します。

 

発達障害の方が自立を目指すために

障害の特性や自己理解を深める

発達障害に限らず、障害を持つ方が自立した生活をするためには、まず自分自身の障害について正しい知識を得、理解することが重要です。特に就労など社会参加をする場合、自身の長所や短所を理解し、仕事や他社との交流に活かすことが必要ですが、障害がある場合は、それに加えて障害特性を理解することも必要です。

 

障害別の特性例

ADHD … 不注意・衝動性など集中することが難しい、忘れ物が多い、じっとしていたりすることが苦手

 

ASD … 物事へのこだわりの強さや、興味のあることへ没頭しやすい、対人関係が苦手

 

LD … 文章を読むのが遅かったり文字を書くのが苦手、数の概念がつかめず計算が苦手

 

自己理解を深めることで、自分の得意・不得意が分かり、対策が立てやすくなります。一方的に制度やサービス、社会の合理的配慮に期待したり、頼るより自分で立てられる対策を立てておくことで、無駄な時間や労力を省くことができ、自分でできることによって自信が持てるなど、より自立した生活が可能となります。

また、就労などの社会参加や介助などの支援を依頼する際にも、自身の障害や特性について周りの人々に伝えやすくなり、自立生活をするうえでメリットとなります。 

                                          

困ったときの相談先や支援先を決める

発達障害をふくむ障害がある場合、当然ながら困りごとが生じると考えられます。しかし、障害から生じる問題は誰にでも相談できるものではなく、専門性が必要となります。そのような状況で困りごとが起こった場合にすぐに相談できる人や場所を決めておくと、迅速な対応が可能になるでしょう。

 

 ※各種相談センター、支援機関については後述

 

ソーシャルスキルを身につける

発達障害がある方は、人間関係の構築が苦手なことが知られています。そのため、他者とうまく関わるための技術や思考法(いわゆるソーシャルスキル)を身につけることが大切だといわれています。

 

ソーシャルスキルを身につけることで、人間関係を良好に保つことができたり、ストレスへの対処や問題解決などが可能となります。発達障害がある方でも、専門の医療機関や障害福祉サービスの事業所などでのトレーニングを受けることで、ソーシャルスキルの上達が期待できます。

 

ソーシャルスキルの獲得に興味がある方はこちらの記事をご覧ください:ソーシャルスキルトレーニングとトレーニングを受ける方法について解説 | atGPしごとLABO

発達障害の方が自立を目指すときの工夫やポイント

【日常生活】

「物」は置く場所を決める

ADHDなどの発達障害がある場合、忘れ物や失くし物を防止するためには、家では物を置く場所を決め、出かけるときはかばんのどこに入れるかを決めておくことが重要です。そうすることで、いざというときに困らない、忘れ物防止と整理整頓につながります。

 

買い物は「ほしいものリスト」を作成する

欲しいものを衝動的に買ってしまうことや、同じようなものを何度も買ってしまうことなどの困りごとを防ぐために、「欲しいものリスト」を作成し、それを見ながら必要最低限の物だけを購入することが大切です。また、金銭やクレジットカード、スマホ決済などを上限を決めて使うことで、お金の使いすぎを防止することもできます。

 

家事は工程を分ける

家事がおろそかになったり、順序良く進められない時は、家事を工程分けして1つ1つこなしていくと次にやることが明確になり、最後までやることができます。

 

 例:洗濯を片付ける場合は「外から中へしまう」「たたむ」「タンスにしまう」などに分けて進めていく

 

毎日を記録する

毎日、できたこと、できなかったことなどを記録することによって、自分の行動や得意なこと、苦手なことがわかり、改善できるようになります。記録するのは面倒ですが、印象に残っている出来事だけでもOKですし、記録の方法も、メモ帳に書いても、スマホのメモ機能を使っても、自分が継続しやすい手段を選ぶと、長く続けられるでしょう。

 

情報の場所は1つにまとめて、分散防止

メモやスケジュールなどの情報を一カ所で管理することで、確認忘れを防ぐことができます。色々な場所に記録すると、どこに記録したか忘れがちになります。そのため、カレンダーアプリのみに予定やメモを残す、目につく場所にカレンダーやメモ帳を置くなど、情報を一つの場所にまとめるようにしましょう。

 

【仕事】

タスクは付箋やメモ帳に残して可視化

仕事上のタスクを可視化するために、付箋やメモ帳、スマホなどに記録します。内容は工程を分けて処理することで、混乱を防ぐことができます。

 

例:「請求作業」だけではなく、「請求書の準備」「金額や宛先のチェック」「請求書送付」などに分ける

 

「今言っても問題ないか」考える時間をつくる

衝動的に自分の思っていることを言ってしまい、周囲が困惑するという失敗がある場合は、会議や相手との会話で自分が発言をする前に、数秒間考える時間を作るようにしましょう。今の話題に沿っているか、相手が困らないかなど落ち着いて考えればうまく発言をコントロールできるでしょう。

 

遅刻が多いならルールで対処していく

仕事やプライベートなど、約束の時間に間に合うように起きていても、なぜか遅刻が多いという困りごとがある場合は、その原因を見つけ、それに対処できるルールを作っていつでもチェックできるようにします。

 

例:出勤時の経路に気になる商品を売っている店があってついつい寄ってしまう。

ルール⇒この店を避けたルートで出勤する

 

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【体調や精神面】

「頑張らない日」をつくる

疲れが感じられると、行動や思考が追いつかなくなり、パニックになりやすくなり、失敗も多くなりかねません。そんな時は、無理せずに「頑張らない日」を作って、しっかりと休んでおくことをオススメします。

 

自分の体調や精神面をよく確認する

どういう場合にストレスを感じたり、楽しいと感じたりするのかなど、自分の体調や精神面の変化を理解して、極力ストレスになることを避け、休みの時は趣味や楽しいことをして心身の健康を維持するようにしましょう。

 

医療機関やカウンセリングを活用

体や精神面で不調を感じたら、一人で抱えず、医療機関やカウンセリングを活用することをお勧めします。発達障害のある人は、自信を持てないことや他者の目を気にするなどがきっかけで、うつ病などの精神疾患(二次障害)になるケースが少なくないことを覚えておきましょう。

 

困ったときの相談先・支援機関

【生活に関する相談先】

発達障害者支援センター

発達障害者(児)とその家族に対して障害に関する様々な相談に応じ関係機関と連携し、必要な支援をおこないます。具体的には発達や福祉サービス利用の相談、就労支援などをおこないます。

 

障害者就業・生活支援センター

障害者雇用促進法に規定される障害者の就業と生活両面での相談支援を実施する機関です。生活面では、日常生活・地域生活に関する助言、関係機関との連絡調整をおこないます。

 

日常生活自立支援事業

、障害者の権利擁護に関わる支援をおこないます。主な内容としては福祉サービスの利用に関する相談、金銭管理、通帳・印鑑の預かり、郵便物の管理などです。

 

【仕事に関する相談先】

障害者就業・生活支援センター

障害者雇用促進法に規定される障害者の就業と生活両面での相談支援を実施する機関です。就業面では、就業に関する相談支援、関係機関との連絡調整をおこないます。

 

地域障害者職業センター

障害者の就労に関わる相談や支援(専門的職業リハビリテーション)をおこなう機関です。具体的には職業評価、職業指導、職業準備訓練及び職場適応援助などを提供します。

 

ハローワーク

就労を希望する日本国民(障害者を含む)に求人を紹介したり、その他の就労に必要な情報や知識、訓練を提供するなどして、その就労を支援します。障害者には、障害者雇用枠の求人を紹介します。

 

就労移行支援事業所

通常の事業所に雇用されることを希望していてかつ、可能と見込まれる障害者に対して、就労に必要な知識やスキルの訓練、就職活動の支援や就職後のフォローなどをおこないます。

 

障害者虐待防止センター

市町村が設置する、障害者虐待に関する通報や相談に応じる窓口です。障害者の人権侵害行為なども相談できます。

atGPは発達障害を持つ方の就労を応援します

atGPは障害者の転職サポート実績ナンバーワンの障害者専門の転職・就職支援エージェントです。atGPには障害者の皆さまを転職・就職成功に導く3つのサービスがあります。

 

①atGPエージェント

障害者の就職・転職に精通したキャリアプランナーが、転職相談を通してあなたと求人とをマッチングさせます

 

②atGP転職

あなたに興味を持った求人企業から依頼を受けた当社スタッフが求人情報をお届けするサービスです

 

③atGPジョブトレ

atPGが設置する就労移行支援事業所ジョブトレでは、それぞれの障害に適した支援をおこなうため、障害別のコースを用意しています

 

まとめ 


発達障害者の自立に関するポイントや支援機関についてご紹介しました。近年、日本でも障害者の自立支援施策は、2007年に署名された「障害者権利条約」を受けて、障害者の権利擁護の観点から整備が進んでいます。しかしながら、障害者の自立への支援をする制度やサービスは不可欠であるということは言えますが、自分自身の特性を理解し、それに応じた工夫をするという、ちょっとした努力も重要です。自立するためには、自分にできることとできないことを見極めることから始め、補えないものは周囲の協力や制度・支援機関を活用して、より充実した自立生活が可能となるでしょう。

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ライター:atGPLABO編集部(監修:戸田重央)

障害者専門の人材紹介として15年以上の経験とノウハウを活かし、障害者の雇用、就労をテーマとした情報発信活動を推進しています。 【監修者:戸田 重央プロフィール】 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所所長。 企業の障害者雇用コンサルタント業務に携わった後、2015年より聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと」を開所、初代施設長に。 2018年より障がい者総合研究所所長に就任。新しい障害者雇用・就労の在り方について実践的な研究や情報発信に努めている。 その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査で取材を受ける。 聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。

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